陽射しが眩しい夏は、漆器のオフシーズンだと
勝手に決めつけていました。
あのギラギラした強い光は
黒と赤のしっとり艶やかな肌には厳しいなぁ、と。
そう言えば、お花見、お月見、紅葉狩り、
人々が野外にお重箱を運んで宴をひらくのは
陽射しも風も心地よい季節。
漆器を洗うのに最適な温度はぬるま湯。
洗い終わったら濡れたまま放おっておかないで、
乾いた柔らかい布で水気をとって静かに寝かせておく。
まるで人と同じ扱いではありませんか?!
人が心地よいと感じる環境が、漆器にとっても居心地が良かったから
こんなにも長い間、人と漆器はともに過ごしてきたのですね。
さて、夏は本当に漆器のオフシーズンなのか、という件。
たしかに、夏の陽射しは激しくて厳しい。
けれどその一方で、強い光は濃い影を生みます。
夏の闇はちょっぴり妖しくて心地よい。
その暗い影の中で、漆器は艶々とした色を放って輝きます。
温かいものは温かいままにしてくれるように、
冷たいものは冷たいままにしておいてくれます。
冷たい飲み物やお料理、アイスクリームやシャーベットなどを
夏の高温攻撃から優しく守ってくれます。
夏は日陰で、
あるいは屋内で、
強い陽射しの裏側の心地よい闇の中で、
夏の漆器を愉しんで下さい。
きっとそこには、いつもと違う夏があります。