あれはちょうど今頃の季節。
家庭訪問で息子の担任の先生が我が家にやってきた。
「勉強部屋を拝見します」
そう言って、先生は息子の部屋のドアを開けた。
昨日、泥棒が入ったあとのような散らかった部屋をせっせと片付けておいて良かった。
内心ホッとしながら先生の隣に立ったものの不安がよぎる。
表情もなくグルリと部屋を見回した後、おもむろに先生は口をひらいた。
「あの引き出しはマンガですね。こちらのも。ざっと100冊といったところでしょうか。」
•••うわっ、大当たりだ•••
すごすぎる、なにこの千里眼まがいの特殊能力。
「受験期ですから、ドラゴン桜とかスラムダンクとか、ブラックジャックによろしくとか、えっと、その••••」
まったく言い訳にもなっていない。
でもね、
そこにあるのは、私が愛する息子たちのために厳選した名作ばかりだ。
息子たちは揃って言う。
「オレたちはヲタクの英才教育をうけている。」
そんな•••ホントのことをズバリと言ってくれて、
お母さんは嬉しいよ。
絵本、童話、小説、マンガ、図鑑、ライトノベル、教科書、ここらへんは全部同じだ。
活字に貴賤はない、と思っている。
なによりマンガは人生語るし、勇気もくれるし、助けられることだってある。
「最後まで・・・希望を捨てちゃいかん。あきらめたらそこで試合終了ですよ」
安西先生がそう言うから、もう少し頑張ってみようと思う。
「あまり強い言葉を遣うなよ、弱く見えるぞ」
藍染惣右介がそう言うから、言葉は選ぼうって思う。
HUNTER×HUNTER とか、NARUTOとか、BLEACHとか、
ツッコミどころも多々あるけれど、それすらも愛おしい名作の数々。
そうえば・・・
「君の名は。」
ウルウルしながら見ていた、いい感じのクライマックスで、
「おまえが世界のどこにいても、必ずもう一度会いに行く」
•••え ? 一度だけなの ?
純真なココロを失うと、欲張りになるらしい・・・