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そこは、たまに訪れるカフェ。
高い天井と開放的な空間が気に入っていた。
うっかり重なってしまったスケジュールに追われて、ロクに眠れていない。
疲労をどっぷり背負いながら、後半戦を乗り切ろうと漂うように歩いていた。
とはいっても、ぼーっとしていては効率も悪いからと、私は自分にコーヒーブレイクを支給した。
温かいラテと•••クロワッサン。
オマケをつけて自分を甘やかす。
すると、注文を確認しながらレジを打っていた女性がふいに
あの•••
私の記憶が間違っていなかったら
ぬるめのフォームなし、ですよね?
と、内緒話をするかのようにささやいた。
その瞬間、
ぼんやりとしたアタマに涼しい風が吹き込んできた。
あ、そうだ、そうです。
お願いします。
憶えていてくれて、ありがとう。
ニッコリ笑うお姉さんが女神に見えた。
私はあなたのことを憶えていなかったのに
最近、人相が変わるくらい髪を短く切ったのに
このまえ訪れたのは1ヶ月以上まえなのに
憶えていてくれて、ありがとう。
あなたのおかげで、今日は良い日になりそうです。