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人間をダメにする○○○

· 猫,モフモフ,こたつ,冬眠,麻薬

ある日の午後、自宅に戻ったら

リビングにモフモフカーペットが敷かれていた。

寒くなり始めて、床の冷たさが気になっていたから

と、彼は言う。

思わずゴロゴロしたくなる心地よさに微かな危うさを感じながらも

「これならストレッチもできるね」

と、安易に答えていた。

それから数日後、そのモフモフカーペットの上にはコタツがセットされていた。

コレはダメでしょ。

幼い頃を雪国で過ごした私は、コタツの脅威を知っている。

アレは麻薬だ。

依存性と離脱症状。

あの多幸感を伴うぬくぬくとした空間に、いったん足を踏み入れてしまったら

再び抜け出すことは難しい。

無理に引き離すと強い離脱症状に襲われて、結局むなしく元のポジションに戻ってしまう。

いやいや、そんなことはないでしょ。

入るも出るも自分の意思だから。

とかなんとか、いいように丸め込まれて

暫定措置ということで、そのままリビングに置かれたままになった。

そして•••

その日から、私はコタツにつながれたままになった。

モフモフカーペットが、コタツの威力をさらに強力なものにしていた。

小春日和のほんわかした温もりが、眠気という副作用をともなって

夢の中へ、夢の中へと誘う。

ごはんは?

と、聞かれても

なにか適当に食べといて

と、答える。

 

コタツの周りに結界がはられているかのように

どこにも動かなくなっていた。

 

このまま冬眠するんじゃないのか?

 

このまま冬眠したい•••

 

夢うつつのまま、丸一日過ごしたせいで、すっかり仕事がたまっている。

 

だから、麻薬だと言ったではないか。

意思のちからでどうにかなるものではないのだ。

 

世の中には、人間をダメにする類があふれている。

 

人間をダメにするクッション。

店先で触ったけれど、アレは確かに危険だ。

SNSでは、あのクッションでダメになった猫の写真が多数あがっている。

 

幸せそうな猫とコタツに同化している自分の姿が重なった。

 

人間やめますか?

それとも••••

 

 

お願いだから、コタツ片付けてっ!

 

吹けば飛ぶような微かな理性を奮い起こし、

悲痛な叫びがリビングに響き渡る。

 

あしかけ3日でコタツは撤去され、モフモフカーペットだけが残された。

 

この世には誘惑が渦巻いている。