菜食主義者がベジタリアン、さらに厳格な菜食主義者がビーガン。
ある年ウチに2人の留学生がやってきた。
アメリカの西海岸から訪れた2人の女子高生は、ベジタリアンとビーガンだった。
さぁて、どんな食事を用意したら良いものか。
素麺に始まり、野菜ばかりの餃子や山菜そば、お好み焼き、タコ抜きのたこ焼き、野菜だけの鉄板焼き(野菜炒めとも言う)
そんな、にわかベジタリアンメニューはあっという間に底をついた。
特にビーガンの彼女は味噌汁も昆布だし以外は受け付けない。
お新香巻きとかカッパ巻きなら食べられるよね、と向かったお寿司屋さんでは
お店の中に漂う魚介のニオイで気持ち悪くなっていた。
そもそも、体育会系の息子たちと私は超ウルトラ肉食系家族だ。
ウチに一歩踏み込んだ時点で、さぞかしケモノ臭かったのではないかと心配した。
いや、そんなことより日に日に食が細っていくビーガン少女の体調が心配だ。
時は高温多湿、不快指数急上昇中の日本の夏。
まぶしくても爽やかな乾いた風がふきぬけるアメリカ西海岸とは勝手が違う。
じっとりした蒸し暑さが彼女の体力を奪っていく。
そして肉食家族の息子と私も日に日にバテていった。
どうする ?
途方に暮れた私を横目に、息子はせっせとパソコンに向かっていた。
さすがITネイティブ世代。
答えはアメリカでも日本でもなく、ベトナムにあった?!
ベトナム料理の生春巻き。
生春巻きの皮、レタス、トマト、キュウリ、ニンジン、エビ、焼き肉、サーモン・・・・
好きなものを好きなだけ包んで、好きなタレで頂く。
コレは大成功だった。
同じような手順で、手巻き寿司もやってみた。
2人の留学生は、あれこれ選びながら楽しそうに食べてくれた。
楽しいと笑顔も増えるし、話しも弾む。
ホストマザーとしては、心底ホッとした瞬間だった。
そもそも、みんなで同じものを食べなければいけない、と考えてしまったのがいけなかった。
同じもの食べなきゃ縛りで、それぞれがしなくていい我慢を強いられていたのだ。
○○縛り、って意外と思い込みだったりする。
同じ格好をする必要はないし、同じものを食べなければいけないわけでもない。
できないなら、できる方法をさがせばいいし、嫌いなら好きなものを選べばいい。
我慢することが美徳だとは思わないし、そんなことを他人に強いることもしたくない。
かつて我慢を強いる時代があり、そうしなければならない事情もあっただろう。
そんな不幸な歴史が、いまだに暗い影を落としているのかも知れない。
だけどいまはそんな時代じゃないでしょ?
その我慢、本当に必要ですか?
我慢ばかりしていると、
何が好きなのか、何が欲しいのか、何を望んでいるのか
分からなくなってしまいそうだ。
与えられるものに選択肢はないけれど
自分で探しに行くのなら選択肢は無限にある。
本当に欲しいものはなんですか ?